空き家に係る譲渡所得の特別控除

空き家に係る譲渡所得の特別控除

電球と夕日

【夕暮れ】

〖認定:マイベスト・プロ福岡

にじこ


お客さまから相談を受けたのですが、なんでもご両親が亡くなり、そのご両親の住まいであった不動産の管理が行き届かずに空き家化してしまって建物の腐朽、樹木や雑草の繁茂を招いていたそうで、最近になって、地元の自治会から「不審者の侵入、放火の危険性があるなど地域の生活環境に影響を与えている」との苦情があり、また、市役所から宅地の固定資産税が高くなるような連絡が入ったそうです。どうしたものかと‥


髙塚税理士


平成27年5月に「空き家等対策の推進の関する特別措置法」が施行され、①そのまま放置すれば倒壊等著しく安全上危険となるおそれがある空き家、②著しく衛生上有害となるおそれのある空き家、③適切な管理が行われていないことにより著しく環境を損なっている空き家を「特定空家」と位置づけて、平成27年度税制改正により、特定空家に係る土地は、住宅用地の固定資産税及び都市計画税の課税標準の「特例対象」から除かれることとなりました。したがって、たとえ建物を解体しなくても特定空家に該当してしまうと固定資産税は増加することになります。
したがって、特定空家に該当しないよう「管理」に徹するか、空き家を「解体」して活用を考えるなどの選択が求められますし、又は不動産を「手放す」ことを考える【その場合は課税が発生】方もおられると思います。


にじこ


売却した場合は、両親が住んでいた居住用財産を譲渡するのですから、「3,000万円控除の特例」などの特例適用について相談にのってあげればいいのですネ。


髙塚税理士


相続財産を相続した方が売却する。ということは、売却する方の居住用財産ではありませんから、「3,000万円控除の特例」などの適用はないことになります。ご両親が住まわれていた不動産であるから控除が受けられると勘違いしておられた者もいましたが、あくまでも所有する者の居住用不動産でなければ、3,000万円の控除は受けられないのです


にじこ


そうでした。同居している相続人、又は遺贈等により取得した同居の個人が売却したのであれば、居住用財産の特例の適用についてのアドバイスが必要かもしれませんが、今回の譲渡物件は空き家ですからネ。


髙塚税理士


こうした背景の下で、平成28年度税制改正では、新たな税制上の措置として「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が創設されました。

>制度の概要<
相続時から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住の用に供していた家屋を相続により取得した個人が、当該家屋(耐震性のない場合は譲渡前に耐震リフォームをしたものに限り、その敷地を含む。)又は除却後の土地を譲渡した場合には、当該家屋又は除却後の土地の譲渡益から3,000万円を控除することができる。
適用期間
平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間の譲渡

≫主な適用要件≪
①相続した家屋は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物(マンション等)を除く。)であって、相続開始の直前に、被相続人以外に居住者がいなかったこと。
②譲渡した家屋又は土地は、相続時から譲渡時点まで、居住、貸付け(無償も含まれる。)、事業の用に供されていたことがないこと。
③譲渡価額が1億円を超えないこと。

適用要件をみると、この特例が、古い空き家の有効活用や取壊しの促進を目的としていることが読み取れます。

その他の留意点として
・家屋を取壊した場合には、土地の固定資産税等が跳ね上がること(その年の1月1日時点の状況による)。
・空き家を解体、又はリフォームをする場合、地方自治体に補助金、助成金の制度があるかを確認すること。
・確定申告書に、地方公共団体の長等から要件を満たす証明書類を入手して添付する必要があること。
・単独でなく、複数の相続人で相続した場合、各々に控除の適用を受けられることが考えられること。
・「相続税の取得費加算の特例」との選択適用とされ、どちらが有利かの検討を要すること(特に、被相続人の居住の用に供されていた部分と非居住用部分とから成る家屋又は敷地である場合)。
・被相続人が老人ホーム等に入居しており相続発生時は空き家になっていた場合には、特例の適用が可能かの検討がいること(平成31年4月1日以後の譲渡については、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定の事由により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合で、一定の要件を満たすときは、その居住の用に供されなくなる直前まで被相続人の居住の用に供されていた家屋は被相続人居住用家屋に該当すると改正されました)。
・相続税の小規模宅地等の評価減の適用(いわゆる「家なき子」が取得した場合)、重複適用について検討がいること。
・相続又は遺贈により、被相続人居住用家屋と敷地等の両方を取得した個人に限られること。
・譲渡価額1億円の判定に当たっては、①譲渡資産が共有であった場合の取り扱い、②店舗兼住宅であった場合の取り扱い、③対象譲渡資産一体家屋等の適用前譲渡又は適用後譲渡との取扱いなど、細かい通達の定めがあること。
・他の相続人に対する通知義務があること。

などが考えられます。

適用要件が細かく定められていますので、適用に当たっては事前に税理士に、また、補助金等については地方公共団体の担当者等に相談することをお勧めします。

  お問い合わせ先電話:090-4513-4287




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