質問 父が死亡し相続税の申告を済ませました、その後に税務調査があって、調査官は相続人である、私名義の株式が
申告漏れであるといっています。この株式は、父が生前、私に贈与するからといって名義変更してくれたものです。
アドバイスをお願いします。
相続税調査で指摘されるケースはいろいろありますが、このような名義株、名義預金といった指摘は多く、また、税務署が特に目を光らせているところでもあるのです。質問者(以下、「Aさん」という。)は、「この株式は過去に贈与を受けたので、父の相続
財産ではなくAさんのものであるから、申告漏れといわれても納得できない」とういものだと思います。
少し整理すると、Aさん名義となっている株式が、相続財産となりうるのか。名義変更という行為をもって、そのときに贈与があ
ったものであるから、相続財産であるとの指摘は誤りがある、と考えられないか。実は、その判断も間違いではないのです。
そうすると、贈与した場合には、贈与税(暦年贈与であれば、基礎控除110万円)の申告と納税が必要となりますが、その税金はどうなると思いますか。すでに申告と納税を済ませていればいいのですが(贈与があったという事実判断の一つとなるのですが)、申告と納税をしていなかった場合には、税金の時効(期間制限)がからんでくるのです。
つまり、「相続時の財産の帰属」、「生前贈与の事実」、「税金の時効」とうい三つのキーワードの検討と課税の事実認定が重要な判断要素となるものと考えます。
質問の内容からは、調査官が、どのような事実をもってその株式が相続財産から逸出していないと判断したか不明ですので、アドバイスは抽象的・表面的なものにまってしまいましたが、東京地裁平成18年7月19日判決「株式の帰属を認定するに当た
っては、株式の名義が重要な要素とはなるが、他人名義で株式を取得することも、特に親族間においては珍しくはないことからすれば、誰が株式購入の原資を出捐したか、株式売買の意思決定をし、株式を管理運用してその売買益を取得しているの
は誰か、さらに、売買・購入を短期間に繰り返すことがなく、比較的長期間保有を続けている株式にあっては、その配当金を取得しているのは誰かもまた、その帰属の認定に際して重要な要素ということができることから、これらの諸要素、その他名義
人と管理、運用者との関係等も総合的考慮すべきものと解される。」があるので参考としていただきたい。
参考資料
〇 「相続時の財産の帰属」、「生前贈与の事実」、「税金の時効」
項目 | 発生する争点 | 課税要件事実 | 申告期限等 |
相続税 | 相続財産の帰属 | 相続又は遺贈(死因贈与)により財産を取得した個人 | 知った日の翌日10か月 |
贈与税 | 贈与の事実認定 | 贈与により財産を取得した個人 | 翌年2/1~3/15 |
期間制限(時効) | 税金の時効の到来 | 更正又は決定:国税の法定申告期限から | 原則5年(贈与6年)脱税7年 |
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