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相続税法の特則による更正の請求と評価誤りの是正の関係


 
 
園生
質問者

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うこととなっていますが、遺産分割が成立していなくて実際に取得する財産が確定しない場合はどうなりますか。

にじこ
指導員

その場合は、民法の規定に基づく法定持分で申告を行い、その後、分割協議が成立し、当初の申告額を下回った者や特例の適用を受けることができる者は「更正の請求」をすることとなります。

税理士
税理士

そのとおりです。 正確にいいますと、更正の請求ができるこことされています。相続税の特則では、A、相続人間における遺産の配分が確定したこと、B、相続人の数が増えたこと、C、配偶者に対する税額軽減の適用や小規模宅地等の特例の適用が可能になることによる事由、D、取得した財産の権利の帰属に関する訴えについての判決(和解は不可)などが更正の請求事由と定めています。

園生
質問者

たとえば、遺産分割協議が終わったから更正の請求をする場合、土地が過大に評価されていたことが判明し、その際に、併せて更正の請求をすることもできると考えていいでしょうか。

はなこ
指導員

残念ながら、土地が過大に評価されていたという事由は、相続税法第32条に規定する特則の事由に該当せず認められません。その場合は、一般の更正の請求(国税通則法)になります。が、これには更正の請求ができる期間(その法的申告期限から5年以内)がありますので注意が必要です。

税理士
税理士

その点について興味深い東京地裁の判決があります。掻いつまんでお話ししますと、遺産分割が成立していない段階で税務調査が入り、甲税務署長は株式の一部の価額が過少であるとして更正処分をしました。Xはその処分の取消を求めて提訴しました。

たろう
事務員

先生、私から質問します。未分割の申告案件についても、税務署は調査に入るんですか。

税理士
税理士

分割が済んでいないから調査はしない、できない、ということはありませんので、遺産分割は調査対象事案の選定にはまったく影響しません。

税理士
税理士

どこまで話しましたか。そうそう、東京地裁ですね。争点となったのが非上場株式の評価ですが、地裁は通達によらない方法で株式の価額を認定しました、その結果、株式の価額は申告額をも下回ることとなるから、処分のうち申告の額を超える部分を取り消す旨の判断をしました。その後、控訴審でも支持をえて確定しました。

たろう
事務員

東京地裁は、申告に係る納付すべき税額を超える部分を取り消す旨の判断をしたということは、つまり、株式の価額は申告額を下回ると認定したのであるから納付すべき税額も申告に係る税額より少なくなるはずであるにもかかわらず、処分で増加した部分のみを取り消す旨の判決を言い渡した、ということですか。

税理士
税理士

訴訟物の範囲は総額主義を前提にしつつ、訴訟においてはいわゆる争点主義的運営を行っているのですが、あくまでも判決の拘束力は、処分の取り消しなどの請求認容の効力に限られているということです。つまり、双方の主張により明らかとなった争点に主眼を置いて実質判断をするけれども、判決は、処分の効力が維持されるか失われるかを判定するということです。

はなこ
指導員

そうしますと、Xは、申告額を下回る部分については、一般の更正の請求をすればいいということですね。

税理士
税理士

そのとおりです。が、一般の更正の請求はもとより、評価通達の改正につながったことによる制限期間も経過していたので、更正の請求をすることができなかったということです。

たろう
事務員

つまり、裁判所から、申告による納付すべき税額が過大であるとのお墨付きをもらったにもかかわらず、納付した税額の還付はなかった、ということですか。

税理士
税理士

平たくいえばそのとおりです。ですから、遺産分割が成立した際、Xらは相続税の特則の規定による更正の請求及び修正申告における課税価格の算定の基準となる価額を、判決において認定された株式の価額であると主張して、また、東京地裁もそれを相当であると認めたのです。柔軟な法解釈により妥当な結論を導いたものと評価し得、実務上も重要な意義を持つ判決であるという人もいますね。

はなこ
指導員

先ほど相続税法の特則による更正の請求には要件があるとのお話がありましたが、この東京地裁の判断は、どの要件をどのように具備していると認定したのでしょうか。

税理士
税理士

取消訴訟の認容判決(取消判決)の拘束力を根拠に、行政事件訴訟法の拘束力が及ぶものと解釈するのが相当であるとして容認したのです。

はなこ
指導員

そうしますと、未分割であったことが幸いした、逆にいいますと、調査の際に分割協議が成立しておれば救済すべく方法はないということでしょうか。私は租税の公平という重要なものが隠れてしまっているような気がします。

税理士
税理士

判決には苦心の跡が窺われます。相続税と国税通則法の地位は、前者が特別法で後者が一般法であるから相続税が優先され、国税通則法と行政事件訴訟法は、特段の定めがあれば別ですが、国税通則法が特別法の地位に立ち優先されます。行政事件訴訟法の文言から直ちに導き出される解釈ではないとも思われます。いずれにしても、課税庁が控訴しています。

※ 東京地方裁判所平成28年(行ウ)第344号相続税更正処分等取消請求事件平成30年1月24日判決

園生
相談者

ありがとうございました。正直に言って、よくわかりませんでした。

 

 


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